遺言の確認の流れと注意点
相続が発生した時、遺言の確認は最も重要な第一歩です。遺言の有無確認から検認手続きまで、相続人の皆様が知っておくべき基本的な流れと注意点を解説します。遺言に関する正しい知識を身につけることで、スムーズな相続手続きを進めることができます。
遺言は相続手続きのスタート地点
「あるか・ないか」の確認
遺言の存在を確認することが第一歩です。公正証書遺言か自筆証書遺言か、またどこに保管されているかを調べる必要があります。
遺言の効力確認
形式的要件を満たしているか、内容に問題がないかなど、遺言が法的に有効かどうかを確認します。無効な遺言は相続手続きの根拠になりません。
必要な手続きの確認
遺言の種類によって必要な手続きが異なります。特に自筆証書遺言は検認が必要な場合があります。
遺言の確認は単に「ある・なし」を調べるだけでなく、その効力や必要な手続きまで把握することが重要です。これらの確認が不十分だと、後々のトラブルにつながる可能性があります。
STEP1 遺言の有無を確認する
公正証書遺言
公証役場で作成され、原本が公証役場に保管されています。
  • 全国の公証役場をオンラインで検索できる「遺言検索システム」で確認可能
  • 被相続人の本籍地・住所地・氏名・生年月日などの情報が必要
  • 相続人であることを証明する戸籍謄本等が必要
自筆証書遺言
被相続人が自分で書いた遺言です。
  • 自宅の書類、金庫、机の引き出しなどから発見されることが多い
  • 銀行の貸金庫に保管されていることもある
  • 親しい親族や弁護士、司法書士に預けられていることもある
法務局保管の自筆証書遺言
2020年7月から始まった「自筆証書遺言保管制度」を利用している場合があります。
  • 最寄りの法務局(遺言保管所)に相続人が照会することで確認可能
  • 被相続人の戸籍謄本と相続人の資格を証明する戸籍謄本等が必要
遺言の有無確認の注意点
相続人全員での情報共有が重要
遺言があれば、相続人全員で遺産分割協議をする必要がありません
  • 一部の相続人だけが遺言の存在を知っていると、他の相続人から「隠していた」と疑われる原因になります
  • 遺言書を発見した場合は速やかに他の相続人に知らせましょう
  • 公正証書遺言の場合でも、その存在をすべての相続人に伝えることが望ましいです
相続開始後は、できるだけ早い段階で相続人全員が集まり、遺言の有無について情報を共有することをお勧めします。
STEP2 遺言の有効・無効を確認
遺言の種類を確認
公正証書遺言か自筆証書遺言か、まずは種類を確認します。種類によって確認すべきポイントが異なります。
形式的要件のチェック
法律で定められた形式を満たしているか確認します。特に自筆証書遺言は形式不備が無効理由になりやすいです。
内容の確認
内容が明確か、法律に反していないか、遺言能力があったと認められるかなどを確認します。
公正証書遺言のチェックポイント
  • 公証人が作成するため形式面は安心
  • 内容が法的に有効か確認が必要
  • 遺言者の真意を反映しているか
自筆証書遺言のチェックポイント
  • 全文自筆であるか(財産目録のパソコン作成可。署名押印要)
  • 日付の記載があるか
  • 署名・押印があるか
  • 加除訂正の方法が適切か
遺言の有効性でよくある問題
日付の問題
自筆証書遺言で日付が欠けている場合、無効になります。
  • 「令和5年8月」など月迄の記載は無効
  • 「R5.8.15」のような略式表記も有効
  • 複数の遺言書がある場合、日付で新しいものが優先
  • 押印がないものは無効。ただし死因贈与として有効とした判例あり。
加除訂正の方式ミス
自筆証書遺言で文字の訂正方法が不適切だと無効になります。
  • 訂正箇所を指摘し押印及び「署名」が必要
  • 修正液や二重線のみでの消去は無効になる可能性大
  • あきらかな誤記の訂正は訂正方法が法律どおりでない場合でも有効になる可能性あり(最判56. 12.18)
 
判断能力の問題
遺言作成時に十分な判断能力がなかった可能性がある場合、無効になることがあります。
  • 認知症の診断を受けていた
  • 入院中の重篤な状態で作成された
  • 不自然な内容や筆跡の変化がある

遺言の有効性に疑問がある場合は、早めに司法書士や弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
STEP3 検認が必要な遺言
公正証書遺言:検認不要
自筆証書遺言(法務局保管あり):検認不要(ただし法務局から相続人へ通知あり)
自筆証書遺言(法務局保管なし):検認必要
検認とは、遺言の存在と内容を家庭裁判所が確認し、相続人全員に知らせるための手続きです。検認を行わなくても遺言の効力に影響はありませんが、検認前に開封したり、検認前に遺言を執行すると5万円以下の過料に処せられることがあります。
検認手続の流れ(保管制度なしの場合)
1
遺言書を発見した人が家庭裁判所に申立て
遺言書を発見した相続人等が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に検認の申立てを行います。
  • 申立書(裁判所で入手可能)
  • 遺言書の原本
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 申立手数料(収入印紙800円)、他郵便切手
2
裁判所から相続人全員に通知
裁判所は検認の期日を指定し、すべての相続人に通知します。
  • 相続人は原則として検認の期日に出席する必要がある
  • 遠方の場合は管轄裁判所の変更を申し立てることも可能
  • 都合がつかない場合は欠席届を提出
3
裁判所で遺言を開封・確認
検認期日に裁判所で遺言書を開封し、裁判官が内容を確認します。
  • 封がされている場合は裁判官の前で開封
  • 遺言書の形状・加除訂正の有無を確認
  • 内容を相続人全員に告知
4
検認済証明書を交付
検認手続き終了後、裁判所から検認済証明書が交付されます。
  • 遺言書に検認済の証明印が押される
  • 必要に応じて謄本(写し)を請求できる
  • これを受けて遺言執行の手続きに進む
検認の注意点
「検認は遺言の有効・無効を判断する手続きではありません」
検認は単に遺言の形状や内容を確認し、相続人に知らせるための手続きです。裁判所が遺言の有効性を判断するわけではありません。

検認済みの遺言でも、形式や内容に問題があれば無効になる可能性があります。検認は有効性の保証ではないことを理解しておきましょう。
検認に関するよくある誤解
誤解1: 検認を受けると遺言が有効になる
検認は有効・無効の判断ではなく、遺言の存在と内容を確認するだけの手続きです。
誤解2: 検認は必ず相続人全員で行う必要がある
申立ては1人でも可能です。相続人全員に通知されますが、全員の出席は必須ではありません。
誤解3: 検認手続きに時間がかかる
地域や裁判所の混雑状況にもよりますが、申立てから1〜2ヶ月程度で完了することが多いです。
まとめ: 遺言確認の3ステップ
① 遺言の有無確認
  • 公証役場に問い合わせ
  • 法務局に問い合わせ
  • 自宅や金庫を確認
② 有効性の確認
  • 形式要件の確認
  • 内容の確認
  • 作成時の状況確認
③ 検認手続き
  • 公正証書遺言:不要
  • 法務局保管:不要
  • 自筆証書(保管なし):必要
遺言に関する手続きは複雑です。不明点があれば、司法書士などの専門家に相談することで、スムーズな相続手続きが可能になります。遺言は被相続人の最後の意思表示であり、その意思を尊重するためにも、適切な手続きを踏むことが大切です。

早めの相談が安心につながります
ご自身の遺言作成や親族の遺言についてお悩みの方は、ぜひお気軽に当事務所にご相談ください。